社長挨拶 2040年の リアル・ハビリスの 実現に向けて
ー 生活と社会に接続するケアを追い求めた30年
創心會を創業したのは、今から30年前のことです。創心會をこの地域で30年支えていただいたことに、まず心から感謝したいと思います。
創業の原点には、私自身が作業療法士であるということが、大きく関わっています。当時勤めていた訪問リハビリの事業所は理学療法士が中心となっていました。理学療法士が身体機能の回復を目的とした運動療法の提供を主な役割とする一方、作業療法士は一歩踏み込んで、心身の機能回復に目を向け「いかに生活や社会に接続するか」を役割とします。在宅で自立した生活を実現するためには、機能回復だけでは十分とは言えず、そこには、利用者様の前向きな意思や希望、そして「生きる意味」が必要です。そうした支援は、心の面も大切にする作業療法士だからこそできることではないか。その考えを形にしたいと思うようになり、創心會を立ち上げました。
しかし、リハビリだけでは在宅生活を支えることはできません。リハビリと切り離すことのできないのが、日常生活を支える介護の存在です。私が介護の分野に関わり始めた頃、介護はまだ専門性の確立された領域ではなく、「お世話をするもの」として捉えられていました。その中で私は、強く感じるようになりました。単に生活を維持するのではなく、「その人がその人らしく生きること」そして「その人にとって本当にふさわしい状態をつくること」それこそが、私たちの役割ではないか。そのためには、「介護の中にリハビリテーションの理念・理論・技術を取り入れる必要がある」、そう確信したのです。開業して間もないころ、地域を回り、施設を訪れ、若い専門職たちに語り続ける中で、「一緒に仕事をしたい」と言ってくれる仲間が集まりました。でもそれは療法士ではなく、介護職や福祉職の人たちでした。実はこの出会いこそが創心會の原点であり、現在まで続く「総合ケアサービス」という形へと発展していく礎となっているのです。
転機となったのは、現在では創心會の事業の中核となっているデイサービスへの参入です。創業から4年目に介護保険制度が始まり、私たちはデイサービス事業に参入しました。1号店は、「普通の民家」でした。短期間お借りした住まいだったため、バリアフリー化などの大々的な改修はできず、また十分な設備が整っていたわけでもありません。しかし今振り返れば、そこには創心會の本質がありました。なにしろ利用者様はもともと、「普通の民家」で生活されている方々です。段差がある環境で、どう動くのか。手すりがない中で、どう身体を使うのか。生活そのものの中で実践することこそが、本当の自立支援ではないか。「普通の民家」。これは制約ではなく、「生活をリハビリの場とする」という創心會の原点的発想でした。その後、デイサービスは、利用者様の目標や目的別に4種類へと分かれ、現在では子どものデイサービスも始まっています。
生活を取り戻し、自分の力でできることを増やしていくこと。その実践の場としてデイサービスを展開してきましたが、その中で、私たちはある重要なことに気づきました。利用者様同士の関係性、すなわちピアグループの存在です。同じ時間を過ごし、言葉を交わし、互いに影響を受け合う中で、「自分もやってみよう」という気持ちが生まれてくる。その関係性こそが、人の変化を後押しする大きな力になることを、現場の中で実感してきました。その象徴的な取り組みの一つが「旅リハ」です。仲間とともに外に出かけ、同じ時間を共有し、役割を持ち、思い出を重ねていく。そこには単なる外出支援を超えた、「生きる実感」があります。私たちはこうした取り組みを通じて、個人の回復だけでなく、関係性やコミュニティそのものを育む支援を大切にしてきました。
そしてさらに、その先にあるものが見えてきました。生活ができるようになることや、仲間ができることがゴールではありません。その人が地域の中に出ていき、役割を持ち、活動し、社会に参加していくこと。そこまでつながって初めて、本当の意味でのリハビリテーションであると考えるようになりました。その実現のために、私たちは取り組みを広げてきました。農業分野への展開、就労支援事業の立ち上げ、模擬就労の場づくり、地域の中で役割を実感できるカフェの運営など、利用者様が「支えられる側」から「社会に関わる側」へと移行していくための仕組みをつくり続けてきました。これらは単なる事業の多角化ではありません。ピアによって生まれた意欲を、社会の中で実現していくための“場づくり”そのものが、創心會の実践であったと考えています。
この30年は、単に事業を拡大してきた歴史ではありません。生活と社会に接続するリハビリテーションの考え方を、地域の中で実装してきた30年であったと考えています。
ー これからの創心會が目指す
「リアル・ハビリス」の実現とは
現在、社会は大きな転換点を迎えています。後期高齢者の増加、独居世帯の増大、医療ニーズの高度化、支え手不足、発達障害の増加、8050問題、そして現役世代の心の問題――。これらは個別の課題ではなく、社会構造そのものが持続困難になりつつあることの表れではないでしょうか。こうした時代において、創心會が掲げるのが「リアル・ハビリス」という概念です。
リアル・ハビリスとは、「現実的かつ本質的にふさわしい状態」を意味する造語で、単に「現実的にふさわしい状態」を意味するものではなく、個人にとってだけでなく、社会の仕組みそのものも含めて、芯から相応しい状態を目指すという考え方です。さらにその根底にあるのは、私たちがこれまで大切にしてきた「本物ケア」の考え方です。利用者様のニーズに迎合するのではなく、その人の本来の可能性を引き出し、人生そのものを支えるケア。その積み重ねが、個人だけでなく社会全体を変えていくと、私たちは考えています。
リアル・ハビリスの実現に向けて、私たちは取り組むべき重点項目を明確にしています。まず最優先は、「在宅生活を守ること」ではなく、「在宅限界値を引き上げること」です。どこまで自宅で暮らし続けることができるのか。どこまで地域の中で生ききることができるのか。その可能性を最大限に広げることが、私たちの使命です。その中には、在宅医療、看取り、介護、リハビリ、家族支援など、あらゆる要素が含まれます。看取りとは、単なる終末期医療ではなく、家族が立ち会い、命の意味を受け継ぐ、大切な営みでもあります。私たちは、その時間を地域の中で実現できる社会を再び取り戻していきたいと考えています。もう一つは「自立支援」です。お世話型の介護をなくし、元気に暮らし続けられる環境の整備と、社会保障の最小限の利用を同時に実現することです。これは高齢者だけに限らず、子どもから大人までを対象に、社会参加や労働参加を支援するなど、多くの人が安心して生活を続けられる環境をつくれば、それが結果として「支え手を増やす社会」につながっていきます。
子どもから高齢者まで、すべての人が「支えられる側」であると同時に「支える側」にもなり得る社会。それこそが、持続可能な社会の姿であると考えています。そして、「地域の力との連携」です。創心會はこの30年間、地域の皆様に支えられてきました。その中で地域サポーターの養成やボランティアグループの組織化を進めてきたように、これからも地域の方々と「共に学び、共に支え合うコミュニティ」をつくり、自助、互助、そして共助が機能する良好な地域との関係を築く取り組みを大切にしていきます。最後に、これからの地域ケアには、既存のサービスや制度の延長上ではなく、地域・職種・世代を横断した「未来の地域ケアの創造」が求められてくるはずです。近い将来、AIやロボティクスがリハビリや介護現場で実用化される可能性は十分にあります。それにより、医療や介護の在り方は大きく変わっていくでしょう。しかし、どれだけ技術が進歩しても、人が生きるということの本質は変わりません。身体機能が改善しても、そこに「やってみよう」という気持ちがなければ、生活にはつながりません。私たちの役割は、人を「患者」ではなく「生活主体者」として捉え、自己選択・自己決定を支え、人生を自ら組み立てていくことを支援することです。
創心會はこれからも、すべての世代を対象に、垣根を超えた統合サービスや異分野との連携といった、社会に、そして生活に接続するケアを進化させ続け、人が地域の中で生ききることができる社会の実現に向けて、先頭に立って挑戦し続けていきます。
株式会社 創心會 代表取締役社長